“いつもと違う帰り道を歩く
見慣れない風景、知らない路地裏
時間の流れがゆるやかに速度を落とす
いつもと同じ視線を感じる
振り返るとやはりあれだった
どこにでもいて
いつでもわたしの方を見ている
いつもと同じ、なんてものはない
モチーフとしては同じかもしれないが
それぞれのディテールはすこしずつ違う
世界にぐっと近づいて見ると
あらゆるものことが奇妙であり
何よりも魅力的なことに気がつくことができる
また今日も、寄り道をして帰ろう”
―展示の際に掲載したステートメントより
本作は「風景のディテールに近づく」というテーマで制作したインスタレーション作品である。街でよく見かけるモチーフから、新しい路地裏を作る試み。鑑賞者は寄り道をするように、ギャラリーの中を巡りながら作品を体験する。作品を作ることと寄り道をすることは似ている。慌ただしい時間の流れの中で、ふと立ち止まってみること、目の前の世界を注意深く観察することの面白さは、作品を制作するようになって初めて気がついたことだ。