本作はミュンヘンでの留学中初めて制作した陶芸素材での彫刻と滞在中旅先で撮影した車窓風景からなるインスタレーション作品である。
「Reise praxis」はドイツ語でのタイトルで、英訳すると「Travelling practice」になる。コロナ禍を経て数年ぶりの大移動、旅。週末などのショートトリップでは、陶芸作品をインストールしている小さいスーツケース(左の写真)を常に持ち歩いていた。
留学とはいえ束の間の旅人である私には、そこで作ることができるもの・旅先から持ち帰ることができるものにいつも制限が付き纏った。そうした制限を少しでもポジティブに乗り越えるために、旅先で見た風景やモチーフを写真に納めて、ミュンヘンに帰ってから小さな陶芸のピースとして焼き上げた。
これまでの制作(大型のインスタレーション作品など)では安全面などを考慮すると予想外のことがあまり許されなかった。そしてその現実に対して私は少しのフラストレーションを抱えていたと思う。しかし陶芸は、釉薬などの具合で度々予想外のこと起こる。その偶然性をも楽しめるということが、陶芸の大きな魅力だと思った。
私にとって今回の旅は、新しい風景どんどん飛び込む日々の移動においても、陶芸という未知の素材と格闘する制作面においても、極めて重要で、かろやかなプラクティスだった。